歯科診療所経営の数字の地盤〈仮〉
保険の市場は、医療全体とほぼ同じ速さで動いています。
伸びているのは、通う回数ではなく、一回あたりの点数です。点数を決めるのは、院ではありません。
そして自費の診療は、国の歯科医療費のどこにも数えられていません。
全国の公表統計だけで書いています。特定の医院の数字は含みません。
厚生労働省『令和5(2023)年度 国民医療費の概況』歯科診療医療費/確証 高
市場は、医療全体と同じ速さで動いている
| 年度 | 歯科診療医療費 | 国民医療費に占める割合 |
|---|---|---|
| 令和元年度(2019) | 3兆0,150億円 | 6.8% |
| 令和2年度(2020) | 3兆0,022億円 | 7.0% |
| 令和3年度(2021) | 3兆1,479億円 | 7.0% |
| 令和4年度(2022) | 3兆2,275億円 | 6.9% |
| 令和5年度(2023) | 3兆2,945億円(+2.1%) | 6.9% |
5年で+9.3%。ただし、医療全体に占める割合は6.8〜7.0%でほとんど動いていません。枠の大きさは、医療全体の側で決まっています。
速報:令和7年度の概算医療費では、歯科は3.5兆円(前年度比+3.5%)と公表されています(2026年8月28日公表・確証 中)。
伸びているのは、回数ではなく点数
| 指標(歯科・全国) | 令和6年 | 前回比 |
|---|---|---|
| 1件当たり点数 | 1,315.8点 | +2.8% |
| 1日当たり点数 | 835.8点 | +3.6% |
| 1件当たり日数 | 1.57日 | −0.01日 |
保険の側で伸びているのは、一回あたりの点数です。そして点数を決めているのは、院ではありません。
令和6年度の診療報酬改定で点数が上がり、全国の1日当たり点数が3.6%上がりました。院の努力の結果ではなく、制度の結果です。保険の階にいるかぎり、単価は自分では決められません。
国は、歯科を人で測っている
| 業種 | その業種にだけ用意されている行 |
|---|---|
| 理容業・美容業 | 椅子1台当たり売上高 |
| 小売業・飲食業 | 店舗面積3.3㎡当たり売上高 |
| 宿泊業 | 1客室当たり売上高 |
| 歯科診療所 | 該当する行なし(全業種共通の「従業者1人当たり売上高」のみ) |
設備の数で割る行は、歯科には存在しません。歯科という業態は、はじめから人の側で測られる商売として設計されています。
同じ診療所が、三つの様式で別の顔になる
| 調査 | 母集団 | 利益の姿 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査(2025年度) | 融資先の法人 122社 | 営業利益率 −0.7% |
| 第25回 医療経済実態調査 | 医療法人立 134施設 | 損益率 5.5% |
| 第25回 医療経済実態調査 | 個人立 396施設 | 損益率 27.6% |
差を作っているのは業績ではありません。個人立では、院長の報酬にあたる部分が費用に入っていないためだと、厚生労働省が注記しています。
どれが本当か、ではありません。どの様式で自院を見るかを、先に決める必要があります。
黒字と赤字を分けるのは「あと2%」
| 歯科診療所 | 平均値 | 黒字企業平均 | 中央値 |
|---|---|---|---|
| 売上高営業利益率 | −0.7% | +5.5% | 0.1% |
| 労働分配率 | 88.8% | 80.9% | 88.1% |
| 損益分岐点比率 | 102.0% | 96.5% | 100.8% |
差がいちばん大きいのは労働分配率の7.9ポイントです。損益分岐点比率の平均は102.0%。平均の院は、あと2.0%で黒字に届く位置にいます。
従業者1人当たり売上高の平均949.5万円の2.0%は約19万円。保険の1回あたりの金額(全国平均で約8,236円)で割ると、年に約23回、月におよそ2回です。
母集団の違う二つの統計を掛け合わせた目安です。厳密な金額ではありません。
統計に、写っていないもの
ここまでの数字には、自費の診療が入っていません。国民医療費は、選定療養や美容のための費用を含まないと定義されています。
審美・インプラント・セラミック・ホワイトニング。自費の診療は、国の歯科医療費3兆2,945億円のどこにも数えられていません。
比べる業界線が、自費の領域には最初からありません。値段の理由も、続いている理由も、外の平均の側からは説明できない。説明できるのは、その院の中にある数字だけです。
全文でお読みいただけること
- 一人と一日の構造
- 単価と再来の、二階建ての読み方
- 誰について、患者さんが来られているか
- 費用の構造(材料と技工で14.9%、公庫の原価率14.0%)
- 来院の経路の構造
- 半年ごとに読み直す定点の表
ここから先は、人の判断
統計で言えるのはここまでです。何から手を入れるか、何と名乗るか、誰と組むか、何を取りにいかないか。この四点は、院ごとに判断が要ります。表紙の「空欄 4」は、この四点です。
出典
| 出典 | 公表 | 確証 |
|---|---|---|
| 厚生労働省『令和5(2023)年度 国民医療費の概況』 | 2025年10月10日 | 高 |
| 厚生労働省『令和6(2024)年社会医療診療行為別統計の概況』 | 2025年6月25日 | 高 |
| 日本政策金融公庫『小企業の経営指標調査』2025年度・医療福祉版 | 2026年8月 | 高 |
| 中央社会保険医療協議会『第25回医療経済実態調査の概要』 | 2025年11月26日 | 高 |
| 厚生労働省『令和7年度 医療費の動向』(概算医療費・速報) | 2026年8月28日 | 中(原典の再確認は次版) |